個人的には、サイト閲覧中の広告は基本的に邪魔なものと思っているのですが皆様はいかがでしょう。

とは言え、もはやインターネットとは切っても切り離せない広告。
電通の記事『2020年 日本の広告費|媒体別広告費』によると、「インターネット広告費」の総額は、1996年以降成長を続けており、2020年にはメディア界の四皇「マスコミ四媒体広告費」総額とも拮抗しているそうです。

そんな中、Webサイトにて多すぎる広告表示はUXに悪影響を及ぼすか調査してみました。

経緯

先日、とあるオウンドメディアのリニューアル依頼をいただきました。

そのサイトは、まるでエロサイトかの如く、広告のオンパレードでした。
コンテンツより広告があきらかに目立っており、言うなれば映画館のジュースがほぼ氷みたいな状態です。

そこで、回遊率などの改善策として、広告の削減を提案したところ、猛反発がありました。
広告による収益がわりとあるサイトですので、当然の反応です。

また、担当者は「広告表示数とUX、ないしは離脱率は関係ない」という主張でした。

そこで、なんとかその担当者を論破できないかと、後日色々と調べたというわけです。

結論

広告に対し、ネガティブなイメージを抱いているユーザーは大変多いようです。
タイトルの「多すぎる広告表示はUXに悪影響を及ぼすか」と言う疑問に関しては、答えはイエスと言ってよいでしょう。

しかしながら、離脱率に与える影響などに関する明確なデータは、現時点では残念ながら見つかりませんでした。
※ただし、「インタースティシャル(見たいコンテンツを覆い伏せ、広告を強制表示)」は、離脱率に明らかな悪影響を及ぼすようです。

UXの改善により、「利用者や滞在時間が増え、結果的にビジネスに好影響を与える」と一般的には言われておりますが、広告表示を減らすことが「Webサイトによる売上改善」に直結するといった実証データはありませんでした。

そもそも「多すぎる」ってどのくらい?

「多すぎる」と“感じる”広告表示数の具体的な定義はありません。これは、個々人の体感によるものです。

あるユーザーにとっては、サイトを離脱したくなるほどに広告が多すぎると感じ、一方あるユーザーはあまり気にならないと言った具合です。

Every visitor is different. Fortunately, it’s not a mystery. Any publisher on planet earth can segment up their traffic by visitor behavior (traffic source, new/return visitor, landing page, and more) and look at how ads affect each of these different segments. Understanding this data gives the publisher the ability to improve user experiences site-wide; while also maximizing the revenue they earn from ads.
How Many Ads Are Too Many Ads On A Website?

いきなり英語をぶっ込んでみましたが、「多すぎる」の数はもとより、「最適な広告表示数」はユーザーのセグメントによって定義できるそう。

検索サイトから来たのか、そのユーザーは新規またはリピーターなのかなどにより、広告に抱く感情が異なるようです。

みんな広告嫌いだよ

と言ったら言い過ぎかもしれませんが、広告を非表示にする拡張機能やアプリは大変に人気があるようです。

例えば『AdBlock — 最高峰の広告ブロッカー』一つをとっても、世界で6500万人以上のユーザーがいて、ダウンロード数は3億5000万回以上とのこと。

また、サジェストキーワード取得ツールの『ラッコキーワード』にて「web 広告」と検索すると、「web 広告 うざい」や「web 広告 鬱陶しい」といった、もはや誹謗中傷に近い結果が出てきます。

極めつけは、『2019年インターネット広告に関するユーザー意識調査』という情報によると、人々が「しつこい/不快」と感じる比率が、テレビCMの12.1%に対してインターネット広告は31.3%。「邪魔/煩わしい/うっとうしい」と感じる比率は、テレビCMの16.2%に対してインターネット広告は37.8%。
どちらも倍以上の数値を叩き出しております。

広告がかわいそうになってきました。

UXにとってこんな悪影響が

広告が情報収集の効率に悪影響を及ぼす

快適な Web 探索を行ううえで広告が 作業を妨げるか,作業への影響が少ないリンク配置もし くは広告配置があるかを検討した.その結果,広告に注 目しながら作業を遂行する状況では,若年者ではエラー 率が 5 ポイント増加し,高齢者ではエラー率が 14 ポイン ト,作業時間が約 2 秒増加し,若年者以上に広告によって 注意が散漫になる程度が顕著になることが分かった.す なわち,Web 上で頻繁に見られるバナー広告によって, 特に高齢者に対する快適な Web 探索が妨げられる可能性 が示唆された.
広告表示が Web 画面での情報探索効率に及ぼす影響

コンテンツが頭に入りにくくなるってことですね。

音楽配信サービスでは利用時間にも影響

The low-ad group listened for 1.7% more hours weekly than the control group.
The high-ad group listened for 2.8% fewer hours weekly than the control group.
Annoying Online Ads Cost Business

広告が少なめのグループは、基準のグループより1.7%長い利用時間を記録しました。
一方、広告多めのグループは-2.8%短い利用時間となりました。

単純にサイトに置き換えるとしたら、広告が少ない方が滞在時間が長くなると言えます。

※ただし、上記の検証は音声広告なので、一概にサイト広告には当てはまらないと思いますが。

インタースティシャルはUXには悪影響

結論にも書いておりますが、インタースティシャル広告によるUX低下は明らかなようです。

Google ウェブマスター向け公式ブログ [JA] : Google+: アプリ ダウンロードのインタースティシャルに関する事例紹介』によると、インタースティシャル広告は約70%のユーザーを離脱に追い込んだ強者です。

確かにサイト閲覧時に最も邪魔だと感じるのはこの広告です。
無用なポップアップや全画面広告は、非表示にする1クリック以上のストレスを感じます。

ただし、インタースティシャル広告はCVRも高く、売上を生む表示形式ですので、UXとはトレードオフの諸刃の剣と言えるでしょう。

まとめ

やはり、うざくて鬱陶しい広告がUXに悪影響を与えているということは事実のようです。

では広告表示を減らそう!というアイデアがいまいち説得力にかける理由として、収益面で広告は数値化しやすく、UX改善は数値化しにくいという点がポイントでしょう。

また、嫌われものの「広告」を敢えて表示し、「広告なし」の有料プランへのアップセルという試みは理にかなっていると改めて感じました。